糖尿病

糖尿病とは

糖尿病は、血液中の糖分(ブドウ糖)が過剰な高血糖の状態が慢性的に続く疾患です。膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの不足や働きが低下することで生じ、細胞がエネルギーとして消費するための糖分を十分に得られなくなります。
糖尿病は早期の自覚症状が乏しいまま進行し、悪化すると喉の渇き、疲れやすさ、頻尿といった症状を起こします。また、傷が治りにくい、感染症にかかりやすい状態になります。高血糖が続くと動脈硬化を進行させて心筋梗塞や脳卒中の発症リスクが高くなり、さらに毛細血管の狭窄や閉塞、破裂などを起こして深刻な数多くの合併症にもつながってしまいます。目の網膜に合併症を起こす糖尿病網膜症、心臓では心不全、糖尿病神経障害、糖尿病腎症などを起こすこともあります。
糖尿病の完治は望めませんが、適切な治療を続けてコントロールすることが動脈硬化や深刻な合併症の発症、進行を防ぐために有効です。特に、早期発見して血糖をコントロールすることは重要です。健康診断などでグルコースやHbA1cの異常を指摘された場合には早めに受診して適切な治療を受けるようにしてください。特に、自覚症状がない場合も、発症リスクが高くなる35歳を過ぎたら、定期的に検査を受けるようにしましょう。

当院への受診に対して

すでに糖尿病の治療を受けている方へ

  • ご来院される際には、採血がある場合食事を取らずにご来院ください。食事をされた場合には採血時に食後何時間経過しているかお伝えください。
  • 普段、薬を飲んでいる場合はいつも通りに服薬します。
  • ご来院の際にはお薬手帳か飲んでいる薬全てをご持参ください。
  • 健診結果やこれまで受けた検査データがありましたら、ご持参ください。

まだ糖尿病の治療を受けていない、糖尿病かわからない方へ

  • 前日の夜9時までに夕食を済ませ、以降は絶食してください。朝食を食べずにご来院ください。
  • 水や薄い緑茶は飲んでいただいて構いません。
  • 普段、薬を飲んでいる方は、お薬手帳をご持参ください。現在飲んでいる薬を全てお持ちいただいても構いません。

糖尿病の原因

糖尿病患者の9割を占める2型糖尿病は、環境的要因と遺伝的要因によって発症します。

環境的要因

食事、運動、飲酒、加齢、ストレスといった日常の生活習慣が糖尿病の発症や進行に大きくかかわっています。過去に肥満していた、糖分の多い飲料を習慣的に飲むなども注意が必要です。

遺伝的要因

欧米人と比べると日本人はインスリン分泌が少ない傾向があります。特に、食後に上昇した血糖値を下げるためのインスリン分泌が少なく、食後血糖値が上昇しやすいことから糖尿病を発症するリスクが高いとされています。
また、糖尿病の血縁者がいる場合、発症リスクが高く注意が必要です。

糖尿病の種類

糖尿病は、1型糖尿病、2型糖尿病、その他に分けられ、2型糖尿病が9割を占めています。

1型糖尿病

先天的(遺伝的因子)やウイルス感染などによってインスリンを分泌する細胞が破壊され、インスリン分泌が絶対的に不足してしまう疾患です。

2型糖尿病

インスリンが出にくい体質など遺伝的要因と、運動不足や糖質の過剰摂取など生活習慣の乱れによってインスリンの働きが低下するなど環境的要因が組み合わさって発症・進行する疾患です。

その他

遺伝子異常、内分泌疾患、膵疾患、ウイルス感染などの疾患、薬剤や化学物質の影響などによって発症する二次性糖尿病があります。また、妊娠中の糖代謝異常による妊娠糖尿病は出産によって改善しますが、将来的に糖尿病発症のリスクが高いとされています。

糖尿病の症状

2型糖尿病では、初期に自覚症状がないことも多く、食生活に気を付けるとともに定期的に検診を受け、早期に疾患を発見することが重要です。
なお、比較的あらわれやすい症状は下記の通りです。

  • 皮膚が乾燥する(かゆい)
  • 疲れる(疲労感)
  • 手足の感覚が鈍る
  • 頻尿(多尿)
  • 感染症にかかりやすくなる
  • 勃起不全(インポテンツ,ED)
  • 創傷治癒遅延(切り傷など外傷が治りづらくなる)
  • 喉が渇く

など

糖尿病の合併症

糖尿病は生活習慣病であり、動脈硬化を進行させ、血管の狭窄や閉塞を起こしやすくします。心筋梗塞や脳卒中を筆頭に脳血管疾患を始めとして、閉塞性動脈硬化症といった全身血管障害の発症リスクを高めます。内臓脂肪型肥満があり、糖尿病脂質異常症高血圧のうち2つの疾患がありメタボリックシンドロームの場合、血糖や脂質、血圧の検査数値がそれほど悪くなくても動脈硬化が大きく進みやすい傾向があります。生活習慣病は自覚症状に乏しいまま進行するため、ある日突然、血管の深刻な発作を起こす可能性があります。
また、糖尿病では、毛細血管にも大きなダメージを蓄積して様々な合併症を引き起こします。糖尿病には糖尿病網膜症・糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症という三大合併症があり、失明や足の壊死、透析が必要になる腎機能障害などを起こす可能性があります。
生活習慣の改善を続けることでこうした合併症を起こすリスクは低減できます。

心筋梗塞

心臓は休みなく拍動を続けており、心筋を動かすための酸素や栄養は冠動脈から送られてきます。心筋梗塞は冠動脈が閉塞して血流が途絶し心筋細胞が壊死してしまう疾患です。心筋梗塞は激しい胸痛を生じることが多いですが、糖尿病が進行して神経障害があると心筋梗塞を起こしても無痛性心筋梗塞と言われ痛みを感じないことがあるので心筋梗塞から心不全まで進展して初めて症状を自覚する重症な場合も散見されます。重度の糖尿病がある場合には定期的な心臓のチェックが特に必要です。

心筋梗塞

脳梗塞

脳の血管が閉塞している状態です。閉塞した遠位に酸素や血流が途絶しその部分が壊死してしまうため、閉塞した場所によって生じる神経症状は多岐に渡ります。半身麻痺や言語障害などの重い症状を機能障害として残すこともあります。また、適切な治療を受けないと再度脳梗塞を起こして重篤な症状につながりやすくなりますので2次予防の継続加療が更に大切となります。

閉塞性動脈硬化症

全身の動脈に狭窄や閉塞を起こし、血液循環に障害が起こっています。最初は手足の冷えや足の痛み、しびれなどを起こし、進行するとこまめに休まないと歩行できない間欠性跛行(かんけつせいはこう)が出現します。ケガが治りにくい場合、足趾の潰瘍が繰り返しできるといった皮膚症状を起こし、壊死してしまうこともあり下肢切断を余儀なくされる場合もあるので、定期的な全身の動脈硬化の評価が大切です。

閉塞性動脈硬化症

糖尿病網膜症

血糖値が高いと網膜に十分な酸素が行き渡らず糖尿病網膜症を引き起こします。日本人の失明の原因として上位にあり、失明に至らないよう早期の治療が求められる疾患です。初期にはほとんど自覚症状がありませんが、初期でも網膜の出血、浮腫が見つかることがあり、さらに進行すると急激な視力低下、緑内障や網膜剥離などの合併症を引き起こす場合もあります。糖尿病と診断されたら糖尿病を含む生活習慣病の治療とともに、状態にかかわらず定期的に眼科も受診して検査を受けて頂くようにお手伝い致します。

糖尿病性神経障害

糖尿病による血糖コントロールの悪化では、末梢神経が最初に障害を受けることが多くなっています。手足のしびれ、冷え、ほてり、痛みを感じにくいなど感覚が鈍くなること、足をつるなどは、糖尿病性神経障害で生じやすい症状です。知覚鈍麻(痛みを感じない、熱さを感じないなど)の結果、進行すると潰瘍を繰り返して壊死や切断につながる可能性があります。爪や皮膚のケアをしっかり行うことが重要です。また、自律神経障害の立ちくらみ、胃腸症状、発汗異常、排尿障害などの症状を伴うこともあります。

糖尿病性腎症

血液をろ過して尿を作る腎臓の組織がダメージを受け、尿をうまく作れなくなる状態です。悪化すると血液を体内から取り出し、機械で不要な体内の毒素となる成分をろ過し、人工的に尿を作って排除する人工透析を定期的に受ける必要が生じます。人工透析が必要になると、毎週3回、それぞれ3-4時間の透析が必要となり、日常生活に大きな支障や制限を生じます。また、透析によって様々な疾患のリスクも上昇します。人工透析を受ける原因として最も多いのは、糖尿病腎症とされているため、初期の段階から糖尿病の治療をガイドラインに準じて行うことが大切です。

糖尿病の治療

糖尿病を完治に導く確実な治療法はありません。しかし、血糖をコントロールすることは可能であり、それによって深刻な合併症の発症や進行のリスクも軽減できます。糖尿病の初期では、食後高血糖という食後の血糖値だけに異常があらわれることもあります。食後高血糖だけがある時期に食事療法や運動療法をはじめ、血糖値を良好にコントロールすることで糖尿病の進行や合併症の発症を防ぐことができます。また、健診などで糖尿病を指摘された場合はほとんどが軽度の糖尿病であり、投薬での治療を開始する前に、生活習慣を見直すことで改善できることもあります。適切な食事療法と運動療法を組み合わせながら血糖値をコントロールしましょう。
早期に発見して適切な治療を続けることで良好な状態を保てます。早期発見と早期治療、そして治療の継続が重要になります。

食事療法

必要な栄養を適量摂取することが重要です。絶対に食べてはいけない食品はありませんが、エネルギー量が過剰にならないようしっかり管理する必要があります。外食、間食、甘い飲料、アルコールなどは特に注意が必要です。
医師と相談して、患者様に合ったバランスの良い食事を心がけることが重要です。下記のポイントを考慮した食事からはじめましょう。

  • 食事は腹八分目まで
  • 1日に食べる食品の種類をできるだけ多く
  • 動物性脂質(飽和脂肪酸)を控える
  • 食物繊維の多い野菜(ベジファーストなど)、海藻、きのこなどを積極的にとる
  • 朝食、昼食、夕食の3食を、規則正しくとる
  • よく噛んで、ゆっくり食事する
  • 間食は、糖質を多く含まないものを少量とる

運動療法

運動によって、体内のブドウ糖や脂肪酸の利用が促進され、血行や代謝が改善して筋力が増強し、血糖値の低下やインスリンの働きの改善につながります。既往歴等により運動が禁止・制限される場合もありますので、適切な運動の種類や時間、回数などを医師と相談してから行うようにしてください。

運動療法の禁止・制限が必要なケースもあります

  • 空腹時血糖値250mg/dL以上・尿ケトン中等度以上の陽性など、糖尿病の血糖管理が極端に悪い方
  • 増殖前網膜症・増殖網膜症がある方
  • 腎機能障害がある方
  • 虚血性心疾患・心肺機能障害がある方
  • 骨や関節疾患がある方
  • 急性感染症を発症している方
  • 糖尿病神経障害がある方
  • 高度の糖尿病性自律神経障害がある方

など

薬物療法

食事療法、運動療法を行っても血糖管理が不十分な場合に行います。
糖尿病治療薬は、インスリン分泌促進系、インスリン分泌非促進系、インスリン製剤の3種類あり、経口薬と注射薬に分けられます。
症状や状態、合併症の有無、薬の作用、ライフスタイルなども考慮した上で薬の種類や量を医師とじっくり相談して決めましょう。また、低血糖を起こさないために配慮すべき点も患者様と共有します。

薬物療法はいつまで続ける?

1型糖尿病の場合、膵臓からのインスリン分泌が極端に減少、あるいは枯渇してしまいます。インスリンは命を存続させるために不可欠であり、インスリン補充を含めた薬物療法を継続する必要があります。
2型糖尿病では、食事療法や運動療法によってインスリンや内服薬の減量や休薬ができる可能性があります。ただし、2型糖尿病でも長期に血糖管理の悪い状態が続くとインスリン分泌が極端に減少、あるいは枯渇することがあり、その場合には薬物療法を中止してしまうと危険です。2型糖尿病でも、膵臓からしっかりインスリンが分泌され、それが持続できる状態になってはじめて減薬や休薬が可能になります。薬の服用を含め、治療に関しては医師としっかり相談しながら進めることが重要になります。ご不安なこと、ご不明点等ございましたら、お気軽にご相談ください。

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